リチウムイオン電池の豆知識

リチウムイオン電池に関する情報をやさしくご紹介。

バッテリーニュース

 


東芝、6分間の超高速充電で320km走行可能にする次世代リチウムイオン電池 (2017.10.8)

 東芝が自社ブランドのリチウムイオン電池SCiBを進化させ、次世代型SCiBを開発したという話題です。

pc.watch.impress.co.jp

 株式会社東芝は10月3日、従来品の2倍の容量を持つ負極材を採用した「次世代リチウムイオン電池(SCiB)」の試作に成功したと発表した。

 本SCiBを用いることで6分間の急速充電で、従来のリチウムイオン電池を搭載するコンパクトEVと比較して走行距離を3倍の320km(※32kWh電池容量搭載のコンパクトEVを想定したJC08モードでの走行距離換算)に延長可能という。

 

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 これは実現すれば相当なインパクトのある電池です。

 SCiBは負極にチタン酸リチウムを採用し、もともと長寿命(充放電回数約5000回)でかつ安全性が高いのが特徴でしたが、定格電圧が2.4Vしかなくエネルギー密度が低いという弱点がありました。

 次世代SCiBではチタンニオブ系酸化物の負極によりこの弱点を克服して容量を2倍にしたうえ、10C充電(32kwhの容量のバッテリーを6分間で充電)が可能だといいます。これは現行の他社のリチウムイオンバッテリーに比較して驚異的な性能です。急速充電性能が高まれば電気自動車の実用性も大幅に高まります。

 東芝は現在会社存続の危機にあり、稼ぎ頭のメモリー事業の売却をめぐって大騒ぎとなっていますが、やはり現場の技術者はしっかりと仕事をしていますね。メモリー事業を売っちゃって本当に大丈夫?と心配していましたがこの商品の優位性が一つの答えなのかもしれません。

 電気自動車は部品点数が少なくシンプルな構成であり、多くの部品は性能に大きな違いはなく差別化はできません。すると最大のポイントはリチウムイオン電池の進化となります。コスト・安全性・寿命・急速充電・エネルギー密度などリチウムイオン電池にはまだまだ改良の余地がたくさんあります。コスト面ではすでに中韓メーカーに太刀打ちできない状況ですので、日本のメーカーには高性能・高付加価値のバッテリーでリードしていただきたいと思います。

 

 

日産、EV用電池量産から撤退へ 中国ファンドに売却 (2017.8.2)

 日産がNECとの合弁事業であるEV用リチウムイオン電池の製造から撤退し、事業を中国企業に売却して技術開発に専念するというニュースです。

www.asahi.com

 日産自動車は、電気自動車(EV)「リーフ」に搭載している電池の生産子会社を、中国の投資ファンド「GSR」に売却する方針を固めた。電池の量産からは撤退する一方、最先端の電池の研究開発に資源を集中する。売却額は1千億円規模の見通しで、今夏にも交渉をまとめ、発表する。

 日産は自動車大手の中でも特に早期から電気自動車に着目し、開発を続けてきた会社です。2000年には当時としては画期的な電気自動車ハイパーミニを販売しています。

 NECとのリチウムイオン電池製造の合弁事業であるオートモーティブエナジーサプライの設立は、世間が電気自動車に浮かれていた最中の2007年に発表され大きな話題となりました。同社の製造するバッテリーは日産のリーフに搭載されています。 しかしながら供給先が日産向けに限られると供給量は限定され、今後も大幅な増加は見込めず採算に合わないと判断されたようです。

 リチウムイオン電池はもはや先進技術の塊ではなく、世界中のどこでも製造可能なのでコスト競争力で優劣が決まってしまいます。とすると圧倒的な投資でコスト低減が可能な中国・韓国勢にかなうはずもなく、撤退は妥当な判断といえるでしょう。

 寂しい気もしますが、今後はあっと驚くような新技術の開発に期待します。

 

 

トヨタが全個体電池搭載のEVを22年に販売開始 (2017.7.28)

 トヨタが、リチウムイオン電池よりも飛躍的に性能を向上させた「全個体電池」を搭載したEVを平成22年から国内販売する方針を固めたという驚愕のニュースです。

www.chunichi.co.jp

 トヨタ自動車は、現状の電池よりも飛躍的に性能を高めた次世代の「全固体電池」を搭載した電気自動車(EV)を二〇二二年にも日本国内で発売する方針を固めた。

 トヨタの地元名古屋の中日新聞の記事なので信ぴょう性は高いのでしょう。各社から後追い記事が出ています。

 全個体電池とは、リチウムイオン電池の+電極と-電極の間を満たすリチウム電解液を、これまでの液体やゲル状半固体の代わりにセラミック系の個体材料で埋めるというものです。リチウムイオン電池は現在では高性能電池として広く普及していますが、まれに発火したり爆発したりする危険性が常に問題視されてきました。この危険性をなくすためメーカー各社は徹底した品質管理行っていますがそれでもリチウムイオン電池関連の事故は後を絶ちません。これが全個体電池になると、電極の間を固体で埋めるために電極のショートの危険性が大幅に少なくなり、安全性が飛躍的に向上します。さらに充電時間も大幅に短くなるとのことです。

 リチウムイオン電池に関する研究開発は世界中で行われていて、よく「性能が飛躍的に向上する」ような研究成果がニュースになりますが、ほとんどは聞き流していいレベルの話です。というのは研究開発段階で新たな発見をしても、その後の実用化段階において耐久性・安全性・生産性・コストその他の実用上の問題をクリアできずほとんどが実用化・商品化されずに消えていくからです。全個体電池もそのうちの一つとしか考えていませんでした。

 ところがこれを「トヨタが販売する方針」となると話が全く変わります。トヨタは商品化のためのテストを過去長期間にわたって行っていたはずで、これらの問題をクリアできるめどが立ったからこそこうした方針が出たわけで、つまり商品化の可能性が非常に高いということです。実現すればリチウムイオン電池が商品化されたのと同じくらいのインパクト、まさに「イノベーション」です。

 最近になって欧州自動車メーカーや政府がEV重視の方針を打ち出し、これに対する日本の自動車メーカーの出遅れを懸念する論評がよく聞かれますが、これは見当違いといっていいと思います。日本の自動車メーカーは世界に先駆けてEVの開発に取り組んできた実績があり、事実トヨタはRAV4EVを、日産はハイパーミニを、ダイハツはハイゼットEVをテスラモーターズが誕生する前から開発し販売しています。つまりいつでもEVを主力に切り替える技術も生産能力も販売力もあるのです。ただその方針を明確に1つに絞っていないだけで、特にトヨタは「全正面作戦」を行う余裕があるのでエンジン車もハイブリッドも燃料電池もEVも同時並行的に開発を行っています。あとはどれを選ぶか、さじ加減一つでしょう。

 少し話がそれましたが、ひさびさにワクワクするような電池関連の話題です。

 

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